面会交流
目次
1 面会交流とは
面会交流とは、子どもを監護養育していない親(非監護親)が、離婚後または別居中に、子どもと面会したり、その他の方法で親子としての交流を行うことをいいます。
面会交流には、子どもと離れて暮らす親の権利という側面がありますが、親子間の人的交流・触れ合いにより、子どもの心身の健全な成長を助けるという重要な役割があります。
そこで、面会交流を考える際には、「子どもの健全な成長(=子の福祉・利益)にとって何が大切か」という視点を決して忘れないことが大切です。
また、子どもにとっては、父母どちらの親もかけがえのない存在ですが、子どもが非監護親との面会交流を行うには、監護親の協力・理解が必要不可欠です。そのため、離婚後は、夫婦の関係ではなく、子どもの父親・母親として、新たな信頼関係を構築していくことが何より大切です。
2 面会交流の内容・方法
面会交流の具体的な内容・方法には、大きく分けて、直接的な面会交流と間接的な交流の2つの類型があります。ここでは、それらの類型とともに、面会交流について定めておくべきルールを見ていきます。
(1)直接的な面会交流
最も典型的なのが、宿泊を伴わない面会交流です。頻度については、月1回とするものから、月3回から年1回とするものまで様々な場合があります。
また、非監護親の自宅で宿泊したり、共に旅行に行くなどの宿泊を伴う面会交流もあります。その他、子どもの園や学校行事等への参加などがあります。
(2)間接的な交流
面会を伴わないで子どもと交流する方法です。電話やメール、SNS等でのやり取り、手紙の交換、非監護親からのプレゼントの送付、監護親から子どもの写真やビデオ等の送付を行うものまで様々です。
現段階では直接的な面会交流の取り決めをすることは難しいものの、将来、直接的な面会交流が実現できるように、まずは、上記のような間接的な交流から始めるという場合もあります。
(3)面会交流について定めておくべきルール
・面会交流の頻度(回数)、時間、場所
・子どもの受渡方法(受渡しを行う人、受渡場所など)
・宿泊の可否(通常の場合と長期休み期間中(春休み、夏休み、冬休み、GWなど)それぞれの場合)
・監護親や第三者の立会いの有無
・園や学校行事等への参加の可否
・手紙やプレゼント等を贈ることの可否(可能な場合は頻度・価格など)
・面会交流についての連絡手段
・突然キャンセルせざるを得ない場合の連絡方法、代替日の設定
3 面会交流の決め方・流れ
面会交流の具体的な内容及び方法等については、まずは、当事者間の協議・話し合いで決めます。
当事者間での話し合いが困難であったり、話がまとまらない場合には、家庭裁判所に調停または審判の申立てをして、面会交流に関する取り決めを求めることができます。いきなり審判を申し立てた場合も、特段の事情のない限り、まずは調停に付されます。
なお、この調停や審判は、離婚成立前の別居中の段階においても利用することができます。
調停では、非監護親と面会交流を行うことが、その子の健全な成長を助け、子の福祉(利益)にかなうものとなるよう、子どもの年齢・性別・性格、就学の有無、生活のリズム、生活環境などを考慮しながら、子どもの意向を尊重した取り決めとなるように、話し合いが進められます。
また、調停や審判では、児童心理学などの専門的知識を有する家庭裁判所調査官が手続きに関与する場合があり、面会交流の実施の可否を含め、どのような面会交流が子の福祉(利益)に適しているかを検討するため、子どもの監護状況の調査や試行的な面会が実施されることがあります。
調停での話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、手続きは自動的に審判に移行し、裁判官が一切の事情を考慮して、審判をすることになります。
4 面会交流の可否
(1)面会交流の判断基準
面会交流は、子どもと離れて暮らす非監護親の権利でもあることから、非監護親が監護親に対して面会交流を求めた場合には、監護親は、原則として、これに応じる義務があります。
もっとも、面会交流は、子どもの健全な成長・発達を助けるため、子の福祉の観点から認められるものですので、面会交流を行うことが、「子の福祉(利益)」に合致しないと判断される場合には制限を受けると考えられています。
(2)面会交流の判断要素
子の福祉に合致するか否かの判断にあたっては、次のような要素が考慮されます。
①子どもに関する要素
子どもの意思や年齢、子どもの心身に及ぼす影響、子どもの生活環境に及ぼす影響など
②監護親・監護状況に関する要素
監護親の意思、監護親の監護養育に対する影響、監護親の生活状況など
③非監護親に関する要素
非監護親の面会交流を求める動機・目的(金銭の要求、監護親との復縁を求めるなど)、非監護親の問題性の有無(暴力、酒乱、薬物乱用、調停条項等のルール違反など)など
ここで問題になるのが、養育費が不払いの場合に、面会交流を拒否したり制限できるかという問題です。
養育費と面会交流は、性質が異なるため、養育費が不払いであるからといって、直ちに面会交流が制限されるというわけではありません。しかし、正当な理由もなく養育費を支払わない場合には、子の福祉や権利濫用を理由に、面会交流が制限される可能性も十分にあるでしょう。
④双方の親(両親)の関係に関する要素
離婚に至った経緯、両親の従前の関係、別居期間、別居後の両親の関係など
5 面会交流の定めの変更
面会交流は、子の福祉の観点から判断されますので、一旦決まった面会交流の内容も、子どもの成長・発達段階やその後の環境の変化等に応じて、変更したり取り消したりすることも認められています。
この変更の可否については、子どもの生活状況の変化や合意後の面会交流状況などをもとに、子の福祉の観点から判断されます。
ただし、変更を望む場合には、緊急の場合を除き、一方的に面会交流を制限するようなことは止めましょう。当事者間の協議・話し合いによるか、調停・審判の申立てによる方法をとることが望ましいでしょう。
6 面会交流を実現するための方法
定められた面会交流が行われない場合に、実現するための方法として、次のようなものがあります。
(1)当事者間の協議で取り決めした場合
面会交流の取り決めが、当事者間の協議による場合には、裁判所を利用した履行勧告や強制執行を行うことはできません。
この場合は、家庭裁判所への調停・審判の申立て、民事上の損害賠償(慰謝料)請求、親権者(監護権者)変更の申立てなどの方法を検討します。
(2)調停・審判で取り決めした場合
面会交流の取り決めが、調停や審判で定められた場合には、家庭裁判所による履行勧告のほか、再度の調停申し立て、強制執行、民事上の損害賠償(慰謝料)請求、親権者(監護権者)変更の申立てなどの方法を検討します。
①履行勧告
履行勧告とは、家庭裁判所が、権利者からの申出により、調停または審判で定められた義務の履行状況を調査して、履行されていない場合に、義務者に対して義務の履行を勧告することをいいます。
履行勧告は、家庭裁判所の調停・審判で定められた場合にのみ利用することができます。公正証書など、その他の方法により当事者間で合意したものについては利用できません。
履行勧告の申出は、面会交流を定める手続をした家庭裁判所に対して行う必要があります。また、申出は、書面でも口頭や電話によっても行うことができ、費用は一切かかりません。
ただし、履行勧告には強制力がないため、義務者が勧告に応じない場合には対応できないという限界があります。
②再度の調停申し立て
面会交流は、監護親と非監護親、相互の信頼関係があって初めて実現されるものですので、できる限り話し合いによる解決をめざす方が最終的には良い結果につながることも少なくありません。
そこで、不履行の理由・原因を探るために、家庭裁判所に再度の面会交流調停を申し立てることも有用です。
③強制執行
面会交流については、養育費や婚姻費用不払いの場合と異なり、その性質上、直接強制には馴染まないが、間接強制はできると一般に考えられています。
間接強制とは、義務者が債務を履行しない場合に、裁判所が、義務者に対し、一定の間接強制金の支払いを命じ、心理的圧迫を加えることにより、その自発的な支払を促すものです。
この点、間接強制による強制執行を申し立てる場合には、債務名義性や義務の特定性の有無といった点が問題になります。
これらについては、かなり専門的な内容を含みますので、強制執行を検討する際は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
④民事上の損害賠償請求
非監護親は、監護親が定められた面会交流を不当に制限したり妨害したりする場合には、監護親に対して、民事上の損害賠償(慰謝料)を請求することができます。
もっとも、面会交流は子の福祉の観点から判断されますので、約定後の事情変更により、約定どおりに面会交流を行うことが、かえって子の福祉を害するという事情があることを監護親が立証できれば、損害賠償請求が認められない可能性もあります。
⑤親権者(監護権者)変更の申立て
非監護親は、監護親が定められた面会交流を行わない場合には、親権者(監護権者)としての適格性を欠くとして、家庭裁判所に、親権者(監護権者)変更の申立てを行うことができます。
もっとも、親権者(監護権者)変更の判断は、様々な事情を総合的に考慮して判断されますので、面会交流を拒否したからといって、直ちに親権者(監護権者)が変更されるわけではありません。
玉藻総合法律事務所では、面会交流に関するご相談・ご依頼についても、常時多数お受けしております。
面会交流についてお悩みの方は、当事務所まで、どうぞお気軽にご相談ください。