相手から離婚を求められているが離婚したくない方へ
目次
1 はじめに
結婚するときは、誰もが相手と一生を添い遂げたいと願って結婚すると思います。そのため、双方が同じタイミングで離婚を望んでいる場合は別として、相手から離婚を求められた当初は、納得がいかない、離婚したくないと考える人は、少なくありません。
相手から離婚したいと言われたら、誰だって辛いし、悲しいし、腹が立つし、恨めしいし、納得がいかないと思うのは当然です。
ただ、離婚を切り出した相手に怒りや恨み言をぶつけても、状況は良くならないばかりか、かえって相手の気持ちが一層離れてしまいます。
そこで、まずは、相手の話をよく聞いてみることが大切です。相手がなぜ離婚しようと思ったのかを探り、どのすれば離婚を思いとどまるかを考えてみましょう。相手によっては、離婚を切り出すことで、こちらの出方を見る人もいます。ちょっと乱暴なやり方ではありますが、こじれた夫婦関係を修復したいという相手からの最後のメッセージ・機会である可能性もあります。まだ夫婦で会話ができ、多少なりとも愛情が残っているのであれば、修復の可能性はゼロではありません。
相手の話を聞いて、自分の不適切な発言や行動について反省した場合には、誓約書を書くなどして、誠意を見せるという方法もあります。ただ、離婚を避けたいからといって、相手の言いなりになるのは絶対に止めましょう。
もちろん、相手の話をよく聞いても、やはり納得がいかない、離婚したくないという場合もあるでしょう。
そのとき大切なことは、現状をしっかりと把握した上で、なぜ自分は離婚したくないのか、その理由を探ること。そして、今後自分はどうしたいのか、何を大切にしたいのか等を、複数の選択肢とともに検討していくことです。
夫婦のどちらか一方が本気で離婚を切り出した瞬間、それまでと全く同様の婚姻生活を続けることは、事実上困難になります。
また、自分は離婚したくないのに、離婚を求めてくる相手との婚姻生活は、想像以上に精神的に辛く苦しいのが現実です。仮に離婚裁判になり、当該裁判に勝訴したとしても、法律上離婚が認められないというだけで、相手が離婚を諦め、元の円満な婚姻生活に戻るわけではありません。相手と別居している場合には、以後も別居が継続するだけで、相手に同居を強制することは難しいでしょう。
相手配偶者から突然離婚を切り出された場合、今後どのようにすればよいのか、どうすれば離婚しないですむのか、離婚に応じるべきか、離婚するとしたら条件はどうしたらよいか、今後の生活はどうなるのか等、様々な不安で頭がいっぱいになり、離婚について冷静な判断ができない可能性が高いです。
そんなとき、離婚に詳しい弁護士に相談、依頼することで、ともに現状を把握し、解決策を見出していくことが可能となります。
相手から離婚を切り出されたら、できるだけ早めに、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
2 離婚に応じるか否かは自由
相手から突然離婚を切り出された場合、自分が悪くない場合でも、離婚しなければならないのかと不安になってしまう方が多いのが実情です。特に、妻である女性は夫に経済面で依存していることが多く、弱い立場にあるため、夫から落ち度を指摘されたら、夫の離婚の要求に従わなければならないものと思い込み、冷静な判断ができなくなってしまうこともあります。
しかし、夫婦の一方が離婚を望んでいても、他方が離婚に応じなければ、協議離婚や調停離婚は成立しません。その場合、離婚を望む当事者から離婚訴訟(裁判)を提起し、裁判所が離婚を認める判決を下さない限り、裁判離婚も成立しません。
このように、相手から離婚を求められた場合でも、裁判で離婚を認める判決が出され確定しない限り、離婚は成立しません。決して相手の言いなりになって、離婚しなければならないわけではありませんし、時の経過等によって自動的に離婚が成立してしまうわけでもありません。
もっとも、住宅ローンなど各種ローンの支払いがある場合や、共有財産の殆どを夫婦の一方が管理しているような場合には、離婚に応じるか否かとは別に、財産等に関して、より慎重な検討が必要となります。また、相手に家を出るよう要求されて別居する場合も、今後の交渉が不利になるおそれがあるので注意が必要です。
相手から離婚を切り出されたら、離婚問題に詳しい当事務所まで、お早めにご相談ください。
3 離婚に応じたくない理由
(1)金銭面で不安がある場合
離婚後の生活について、金銭面での不安が大きい場合には、財産分与や解決金といった金銭面で相手に譲歩してもらうよう求めるなど、離婚条件について交渉していくことが可能です。
(2)子どものことが気がかりな場合
「子どものことが気がかりで離婚に踏み切れない」「子どものために離婚したくない」という方は、正直少なくありません。
ただ、夫婦喧嘩が絶えない、夫婦の会話が全くないなど、夫婦の折り合いが悪い状態が続くのであれば、むしろ離婚した方が子どものためになる場合も多いです。
子どもの目の前で行われる夫婦喧嘩や、互いに無視しあう家庭内別居は、子どもに極めて耐え難いストレスを与えます。
子どものために離婚したくないと思っていても、我慢し続けることで自分らしさが失われ、不満やストレスを子どもにぶつけてしまったり、暗い気持ちで毎日を過ごしているのであれば、本末転倒です。子どもは、親が思う以上に、親のことをよく見ています。
あなたが自分らしく生きるためにはどうしたら良いかを、一度じっくりと考えてみることが大切です。
(3)納得がいかない場合
理屈や損得といった問題ではなく、とにかく感情的に納得がいかないということもあるでしょう。特に、不貞をしている配偶者から離婚を求められているようなケースだと、離婚に応じることに納得がいかないと考える方が少なくないようです。
ただし、納得がいかないからといって、やみくもに離婚を拒否し続け放置してしまうと、結果的に金銭面で損をしてしまったり、相手との対立が激しくなって、困難かつ不利な状況に陥ることもあります。面会交流や婚姻費用、さらには住宅ローンの支払い等に支障が出たり、相手から離婚の裁判を起こされるケースもあります。
そこで、万一裁判となった場合の見通しをはじめ、共有財産の保有状況、別居中の婚姻費用等について、十分に検討しておくことをおすすめします。
当初は、納得がいかないという理由で争っていても、時には、途中で争うのを一旦止めて離婚条件を検討してみるという選択肢もあります。
離婚に応じないといって離婚を争う場合には、最終的にどこまで争うのかをある程度考えておく必要があるでしょう。
4 離婚届の不受理申出を提出しておく
離婚する意思がないのに、相手が勝手に離婚届を提出してしまうおそれがある場合は、役所に離婚届不受理申出をしておくと良いでしょう。
離婚届不受理申出とは、離婚届が提出されても受理しないように、あらかじめ役所に申し出ておく手続です。
離婚届不受理申出をしておくと、相手配偶者が離婚届を役所に提出しても、役所はこれを受理しないので、協議離婚が成立することはありません。なお、離婚届不受理申出は本籍地か住所地の役所に提出します。
婚姻届や離婚届は役所の営業時間外でも受理してもらえますが、離婚届不受理申出は、役所の営業時間内しか受理されないので注意が必要です。また、不受理申出書を提出すると、申出を取り下げない限り不受理の効果が続きますので、後日離婚する際には取り下げる必要があります。
相手から突然離婚を切り出された場合、様々な思いから、離婚について冷静な判断ができないおそれがあります。
そんな時、離婚に詳しい弁護士に相談・依頼することで、ともに現状を把握し、より良い解決策を見出していくことが可能となります。
相手から離婚を切り出された場合は、離婚するか否かに関わらず、離婚問題に詳しい当事務所まで、お気軽にご相談ください。